『ル・アーヴルの靴みがき』(前)

伊勢佐木町の奥、黄金町に程近い、単館系シアター・ジャック&ベティへ。
横浜ではすっかり数少なくなった
アンダーグラウンド、インディペンデント作品を上映する稀有な映画館。
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自分の高校時代から変わらない。
映画を好きな人が映画を上映する、素敵な映画館であり続けている。
平日昼間の上映だったので、空いてるだろうと思っていたら、
水曜のレディースデイということもあってか、
シニアの夫婦を中心になかなかの盛況っぷり。

アキ・カウリスマキ監督の新作、
『ル・アーヴルの靴みがき』を観た。
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今回の撮影は、本拠地・北欧フィンランドではなく、
タイトルにもあるフランスのル・アーブルでの撮影ではあるけれども、
お馴染みの世界観は健在。

夫が靴みがきの仕事を終えて帰宅する。
夫「帰ったよ」
妻「そうね」
そのやりとりで、気心の通じたふたりであることがじわっと伝わってくる。
この、「おかえり」でもなく「疲れたでしょ」でもなく、「儲かった?」でもない
「そうね」という返答がいい。
カウリスマキ監督は、会話によって、
ストーリーを立体的に組み立てるということを極力しない。
登場人物、特に主人公は、自分の意志や意見を声高に叫ぶこともないし、
いつも状況に引っ張られていく。
彼らは、黙々と、淡々と、行動する。
そこには、自分の身の回りの出来事の
全てを受け入れて生きていく強さがあるように感じられる。

カティ・オウティネン(妻役)の
寂しさ、諦め、温かさ、すべてが同居したような表情はいつも、
慎ましくも、強く、やさしく生きる市井の人々の美しさを表現している。
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by hiziri_1984 | 2012-05-24 23:56 | 映画館で観る  

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