仕事の得意先に、ある特徴的な男性がいる。
どのような点で特徴的かというと、話す際に言葉につまるというか、
例えば打ち合わせの最中、
「そそ、そっそそそれは、
グゴッ(呼吸困難になったように鼻をヒクヒクしてイビキのような音をたてる)、
つつつ、つっつまり」というように、
吃音とはまた違うんだけど、話す最中に鼻と上唇のあたりが痙攣したようになって、
上記のような喋りっぷりになる。
何度か顔を合わせてはいるものの、一応我々社外の人間と話すということで、
緊張しているのかもしれないし(俺も緊張すると話す速度が急に上がり「えーと」を連発する)、
肉体的な症状が原因なのかもしれない。
俺はそれを見ていて、面白いと思った。
(その男性の話っぷりは『どですかでん』の大女ワイフを持った旦那さんに似ている)
もちろん、ご本人の前で笑ったりはしない。
そういう個人的なデリケートな事を面白いというのは不謹慎だ。
正確にいうと、面白いと思うのは自由だが、それを表に出すのは不謹慎だ。
コンプレックスを笑いにしていいのは、本人だけである。
(その得意先の男性がコンプレックスと感じているのかはともかく)
それか、それを許せるよっぽど親密な知人だけだ。(笑えればそれでいいのだから)
俺は歯が折れて、2本ない。
八重歯の位置。笑った横顔を見られれば、すぐ相手に分かる。
ある人から、その歯の件と、赤髪・金髪+やや童顔+目の下の隈(寝不足)だったりするのを
手がかりに“少年ヤクザ”と言われたことがある。
その場は、面白いけどこれ笑っていいのか的な空気になった。
俺は俺で、はは、たしかにチンピラやと思って、少年ヤクザってウケるなぁと思って、
笑って、歯のない口元をオープン。その場の人はますます困惑した(と思う)。
俺はネタにされたけれども、
コンプレックスを突き通して、もはや笑えたから、別にいい。
得意先の痙攣の件にしても、俺の歯無しの件にしても、
その当人ではなく、その事象について笑っている。
言い方を換えるならば、その事象を起こすポテンシャルを持っている人として、
その人を面白いと思う、という感じか。
これは、正月に病床でまとめ観た「働くおっさん劇場(人形)」に似ている。
でも、
こんなことは自分の胸の中にしまっておけばいいことだ。
と、呑みながら思った。