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奥さんを口説け


「チラシ屋」と聞くと、
“チラシづくり一筋の職人的広告屋”と思われるかもしれないけれども、
広告業界では揶揄的に使われることが多い。

そりゃ、TVや雑誌、駅ホームにある交通広告などに比べれば、
折込チラシには派手さもなく、話題になることもほとんどない。地味な広告媒体である。

しかし、である。
折込チラシは時に、一家の夕食の献立、週末の外食やお買い物の予定を
左右させてしまう決定的なチカラを持っている。

多くの折込チラシのメインターゲットは、
一家の財布のひもを握る奥様方である。
世の奥様方は鋭い。厳しい。そして、ちょっと欲張りだ。
彼女たちからダイレクトに返ってくるレスポンスの、なんとシビアなこと。
でもまた、一度気に入ってくれれば、
「がんばってるじゃなーい」とひいきにしてくれる人種でもある。
そんな敵をひきつけ、落とすにはどうすればよいか。

目をひくインパクト。読みやすいレイアウト。
お店のブランド感、ワクワクさせてくれる期待感、そしておトク感。
パッと目にして「おっ!」とか「へー」となるか、飽きられるか。
勝負は一瞬。

わがままなクライアント(広告主)の要望を汲み取り、
時にしれっとそれをやり過ごし、
あくまでチラシを見る人の生活のリアルに迫って誌面をつくる。

セールの安さを強調する金赤は、
馬鹿馬鹿しさを通り越して、もうなんだか清清しいくらいだ。

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『目をひく!読ませる!チラシデザイン』 パイインターナショナル

日々新聞に折り込まれるチラシを集めた図鑑的一冊。
実に多彩。
主には、デザイナーが制作の参考に活用する本なので
一般の方には手が伸びないかもしれないけれども。
本書のライティングを担当させて頂いたので、ご紹介。
宣伝でござる。

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by hiziri_1984 | 2012-10-31 23:22 | 瀆書体験  

裏横浜といったところ

その日、馬車道から日の出町を経て、野毛横丁へ。
歩き続けて北上し、一度歩いて見たかった紅葉坂を登る。
登りきると大きなお伊勢さん。

それから歩くと、道は野毛山公園に続いていた。
初めて来た。頂上から港町を一望。
こういうところはやはり女性と一緒に来たいものです。
遠足中の子どもの列とすれちがいつつ、
ぶらぶら歩いて戸部。丘を下りる。

進んでいくと川にぶつかり、川沿いを行く。
ふと川に目をやると、鯉たちがなぜか橋の下に群がっている。
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あの辺は、水が温かいのだろうか。それにしてもすごい数だ。
今度は橋の上から川をのぞいてみて、驚いた。

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鯉たちが自分の方へ一斉に駆け泳いできて、
水面で口をパクパクやりはじめた。
エサを求めて、彼らは橋の下でスタンバっていたのか。
水中から水面の向こうがしっかり見えているとは。知らなかった。

その証拠に自分が横へ移動すると、
鯉たちもまたこちらへ寄ってくる。
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わかりづらい写真ですが。

あげるものもないので、再び歩く。
線路を越えて、平沼橋、岡野、
それから浅間台を登って今度は横浜駅を一望。
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こんな風に横浜を見渡せる場所があるんですね。
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谷間を下って、宮ヶ谷、南軽井沢、
そのまま横浜駅西口。

知らない名の街ばかりを歩いた。
雨は降りそうで降らなかった。
10月25日木曜日の正午から15時までのぶらぶらでした。
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by hiziri_1984 | 2012-10-28 15:40 | 散文  

数える人として

東急東横線の駅のホームで、
乗降客数をカウントするアルバイトをやった。

来年の副都心線との相互直通運転を見据えた
ダイヤ改正のための資料として使うのだそうだ。

街頭などで、あのカウンターをカチカチしている人を見るたびに、
自分も一度やってみたいと思っていた。
カウンターとは、NHK紅白歌合戦のラストで
野鳥の会の人々が望遠鏡をのぞきながら
赤と白のパネルを数える時に
手元でカチカチやっているあれである。

朝の通勤通学ラッシュの数時間、
ギュウギュウの車内から人が勢いよく吐き出され、
今度は整列していた人たちが吸い込まれて
車内はまたギュウギュウになっていく。

退職して半年。久しぶりにラッシュ時の満員電車を見た。
いま乗らない人間としてその様子を見ていて、
あらためてすさまじいものだと思った。

駅のホームから定点観測している感じで、
色々なものが見られておもしろかった。
電車を待つ間スマホを使っているOLさんは、
かなり高い確率でFacebookを閲覧していたとか、
日吉には数独の達人のおっさんがいるとか。

ただ、倉庫や現場作業に比べるとカラダを動かさないから、
エネルギーを使わないわけだけれども、
長時間基本的にずっと立っているだけというのは、
かえってカラダがキツいと感じた。腰が痛む。

あまりに腰がつらいので、
ポンポンポンポン叩いて痛みを紛らわした。
それからしばらくして、
カウンターを持った手で叩いていたことに気付いた・・・。

来年のダイヤ改正で、
朝のラッシュ時に渋谷行きの本数が増えていたとしたら、
それは私のせいかもしれません。

(あ、でも、増えた方がいいのか)
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by hiziri_1984 | 2012-10-25 23:58  

自分の声はいつまでたっても聞き慣れない

その昔、人は黙読というものができなかったらしい。
正しくいうと、黙読という読み方がなかった。
読書といえばもっぱら音読・朗読で、
子どもも大人も声に出して本を読んでいたそうだ。
俄かには信じがたいけれども、ものの本によると、
字を目で追うというのは、日本では明治時代以降から一般的になった読み方であるらしい。

朗読と聞いて私が思い出すのは、あるラジオ番組である。
その番組は10年ほど前、TOKYO FMで週に一度、深夜に放送していた。
浪人生だったか大学生の頃だったか、はっきり覚えていないけれども、
夜にラジオを点けたらたまたまその番組が放送されており、
聴こえてきたのは、俳優・竹中直人のシブい声。
彼が何かを読んでいた。朗読番組のようだ。誰かのエッセイを読んでいる。

日常にあるささいなことに目を向けて、注視してみると、
そこに思わず「なんだこれ」と言いたくなるような「妙なもの」が潜んでいることに気付く。
見つめるほどに「普通」に紛れ込んでいるその妙なものが
浮き彫りになってきて、段々可笑しくなってくる。
そんな感じのエッセイ。(なんて抽象的な解説だろう)
それを低音ベースのきいた竹中直人のシブい声が淡々と語る。
そのミスマッチ感がおもしろい。制作の狙い通り、笑ってしまった。

ひとつのエッセイを読み終えると小休止が入って、音楽が流れる。
その曲というのが朗読した作品の内容に沿った選曲で、
番組全体に朗読する作品の世界観や
朗読そのものへグッと引き込む雰囲気があって、
センスいいなぁと思った。シンプルで素敵な番組だなぁと思った。

そしてまた竹中直人の朗読がはじまった。おもしろい。
フフッと笑ってしまうようなネタをあえて真面目に語る文体。
それでいてどこかとぼけたような印象の・・・
あれ、この文章知ってる。読んだことあるぞ・・・。
番組の最後に朗読した本が紹介された。

宮沢章夫 『青空の方法』
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やはりそうだ。書棚にある。おもしろいわけだ。
朗読することで、また違った面白味が生まれるもんだなと感心した。

宮沢章夫は、劇団「遊園地再生事業団」を主宰する演劇人で、
また著作が芥川賞候補になったこともあり、作家としても有名だ。

個人的には何と言っても「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」だ。
宮沢章夫はじめ、シティボーイズや竹中直人、
いとうせいこうといったメンバーで結成されたコント・パフォーマンス集団である。

彼らの実験的でありながらも、きちんとベタの上に乗っかった貪欲さもある、先鋭的な笑い。
それまでコントといえばダウンタウン(松本人志)が斬新であるし最高、と思っていたけれども、
ラジカル~のコントにはそれより以前にこんな変な(おもしろい)ことを
やっている人たちがいたのかという衝撃があった。
1980年代後半に活動していたユニットなので、
リアルタイムではなかったけれども、初めて見たのはたしか、
友人に借りたVHSだった(また見たいなぁ)。

当時としてはやや前衛的なテーマのもと、
“どこまで発想を飛ばせるか”というようなナンセンスを武器にしたコメディと
演劇的シリアスの絶妙な配合、とでも言おうか。
そこにシティボーイズを中心にした独特なキャラクターたちが混ざる。
アンダーグラウンドっぽいちょっと危険な雰囲気も魅力的だった。
 
というわけで、竹中直人の朗読には、
かつて新しい演劇パフォーマンスを追求した(否、し続けている、か)人間たちの
コラボレーションという意味、粋な演出があったのだ。

それからその朗読番組を毎週聴くようになった。
取り扱う本のジャンルは幅広く、朗読者もさまざまだった。
特に、ユーモラスな雰囲気の中に女性ならではの不気味な感じを漂わせる
岸田今日子や樹木希林の朗読は忘れられないし、
よしものばななの小説のおもしろさを知ったのはこの番組を通じてである。

10年前の当時、
斉藤孝の『声に出して読みたい日本語』が売れていたり、
下北沢のストリート漫画朗読家が話題になっていたりしていて、
大学生だった自分は、声に出して本を読むのは
楽しいことなのかもしれないと思って、
小学校の国語の授業以来十数年ぶりに音読をしてみた。
結果からいうと、全然楽しくなかった。すぐにやめた。

それが最近になって、たまに音読をしている。
今考えてみると、当時はまず音読に選んだ本がよくなかった。
たしか、その時にちょうど読んでいた保坂和志の小説を
声に出して読んだのだったけれども、
どうも彼の著作は音読に向かなかったらしい。
途中から苦行のようになってきて、続けるほど楽しいものじゃなかった。

まず、音読したらよさそうなものという視点で選ぶことが必要だったのだ。
そもそもまた音読してみようと思ったのは、
古今亭志ん生や桂枝雀のマネをやりはじめたからで、
マネと言っても、彼らの名演を聞きながら、
それをなぞってブツブツしゃべったりするだけだけれども。
それがちょっと楽しかった。ドーパミンが出てる感じがした。
落語は本ではないけれども、台本はある。
あるものを声に出して読むというのがいいんじゃないかと思って。
それでなんとなく音読をしはじめた。

黙読が頭に入ってくるのに比べて、音読は身体に入ってくるような感覚がする。
音読して何がよいのかと問われたら、何を答えられるわけでもないけれども、
強いていうなら、目だけで読むよりも多少カラダの部位を動かすわけだから、
カロリーを多く消費するかもしれない、というくらいか。
まあ、暇だからやってみたら、案外楽しかったということだ。

せっかくなので、ここ3ヶ月くらいの間で音読してよかったものを紹介します。

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『爆発道祖神』 町田康 (角川文庫) 
なにせリズムがいい。時に講談調になったりする朗読パンク。アドレナリンが出る。

『徒然草』 吉田兼好 (岩波文庫) 
国語の授業で暗記させられた「つれづれなるままに~」のリベンジ。
軽めのエッセイとして読む、という感覚で読むといい。

『桂枝雀爆笑コレクションⅠ スビバセンね』 桂枝雀 (ちくま文庫) 
私的に関西落語最高峰。スピードがちがう。「どんならんでぇ、ほんまぁ」を自然に言ってみたい。



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『乳と卵』 川上未映子 (文春文庫)
町田康の女性版という感じで。エロス。
『先端で、さすわさされるわそらええわ』もお薦め。意味はまだよく分からんけど。

『絶叫委員会』 穂村弘 (筑摩書房)
短歌創作の切り口で、日常に潜む妙な一言を切りとる。読みながらとにかく笑える。

『萩原朔太郎詩集』 三好達治選 (岩波文庫)
詩や短歌は朗読と相性がいい。やはり歌うものだからか。FFの吟遊詩人の気分で。



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『吾輩は猫である』 夏目漱石 (新潮文庫)
まだ読み途中。一篇一篇の長さがちょうどいい。寝転がって読むのがいい。

『小説 真夜中の弥次さん喜多さん』 しりあがり寿 (河出文庫)
時代劇。テンションが高い。「ギャー」とか「ぐえー」を思いっきり読んだら、
家族の者が部屋に飛び込んできた。声量要注意。

『さまぁ~ずの悲しいダジャレ』 さまぁ~ず (宝島社文庫)
笑っちゃってちゃんと読めない。大竹風に読むのが乙。



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『第一阿房列車』 内田百けん (新潮文庫)
百鬼園先生の名旅随筆。ちびちびとお酒を飲みながら読んだりした。

『瀕死の双六問屋』 忌野清志郎 (小学館文庫)
ライブにおける曲と曲の間のMCをやるように読むとピースフル。



基本的にはすべて再読。
次は、谷崎潤一郎の官能・エロス系や
芥川龍之介の寓話的なものがよいのではないかと思っている。
このまま続けたら、
ついでに滑舌もよくなるのではないかと期待している。
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by hiziri_1984 | 2012-10-22 14:42 | 瀆書体験  

淡々と、工場で働いてみる

最近、日雇いで、工場や倉庫で働いている。

退職してから半年が経ち、
そろそろ懐がさみしくなりにけり、といったところだ。

作業の内容は、
工場での組み立て作業、倉庫で荷物の検品・仕分け、
引越しの手伝い、イベント会場の設営、冷凍庫での荷物の運搬などなど。

日時と給与、勤務地を見ながら、
主に横浜、川崎でいろいろな作業をする。

時給が高い仕事はその分、深夜作業や肉体を酷使するので疲労度も高い。
疲れでその日一日がそれっきりになってしまうので、避けている。

大学時代、引越しのバイトをやったとき、
引越し先のマンションのエレベーターが故障したため、
急遽階段リレーをやるハメになり、
あまりのキツさに吐いてしまったという苦い体験もある。
上と下をプロの人に挟まれ、荷物を抱えて、
とんでもないスピードで階段を上り下りした。
あれはキツかった。

というわけで、ガテン系感が極端に強い仕事は避けながら、
日雇いをやっている。

そんな折、たまたま読んだ同人誌に
町工場で働く女性のルポがあって、おもしろかった。

本業はライターである女性が、それだけでは食っていけないので
さまざまな町工場で働き(なんとなく自分と似ている)、
その体験を基にして書かれた、「町工場再発見」的内容のルポだ。

その中に、工場で働くおもしろさを魅力的に書いている一節があった。

 町工場の人々はとても合理的だ。
 人間関係の無駄な部分は、ほぼすべて省く。
 たとえば嫉妬とか愚痴とか陰口とか足のひっぱり合いとか、
 そんなものにはまるで興味がない。
 納期という絶対目標を守る仲間として、
 そこにいる全ての人々を赦し、受け入れ、歓迎する。
 たった1つの目標が、そこにいる異なる境遇の人々を、
 美しい円に繋げている。
 純度の高い「労働」が、町工場には存在しているのだ。

やや美化し過ぎな感がないではないが、たしかにそうだなと思った。
ちょうど工場勤務の休憩中にこれを読んだからか、
余計に共感度も高かった。

会社勤めの経験もあるらしい彼女。
その頃、人間関係のしがらみに巻き込まれでもしたのだろうか。
相当イヤなことがあったのかと思ってしまうほど、
会社への恨みがこもったような一節もあって、笑った。
自分も5年間会社で仕事をしていたから、
そのへんはなんとなく分かる。
ただ、会社には会社ならではの一致団結があるけれども。

工場というと、
鎌田慧の『自動車絶望工場』や
シモーヌ・ヴェイヌ『工場日記』などにあるような
精神的にも肉体的にもキツイ、
悲惨な環境下で黙々と労働するイメージがあったけれども、
実際はかなりちがった。少なくとも自分の知っている範囲では。
案外働きやすい。

「誰でもできる」単純作業であることに変わりはないし、
やりがいがあるかと言われるとYESとは言い難い。
しかしながら、それゆえの働きやすさはあるし、
職場の雰囲気は決してわるくない。
勤務時間休憩時間も厳守だ。

自分にとって、日雇い最大の魅力は、
給与が勤務翌日や翌週に振り込まれることだ。
きょう働いた分、あす報酬が入る。
会社勤めを経て、あらためてこれを体験すると、すごく新鮮に感じる。
妙にうれしいのだ。
「稼ぐ」という実感がある。
(そんなにお金に困っているということではないけれども)

“純度の高い「労働」が、町工場には存在している”
まさにこの感じ。

現場の社員やスタッフの人ともそこまで深く関わることもない。
休憩時間や作業中にすこし言葉を交わすくらい。
気を使いすぎることもない。
それがちょうどよく、居心地はいい。

というわけで、まぁもうすこし日雇いをやろうと思っている。

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引用したルポが載っている、文学フリマで購入した『季刊レポ vol.7』。発行人は北尾トロ氏。
他の同人誌に比べてテーマが普遍的で読みやすく、
いい加減のマニアックさで、おもしろい。


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これが一部引用させて頂いた、
「わたし、何でもできるの? 素晴らしき町工場」というタイトルの中島とう子氏のルポ。
職人の技やパート女性のたくましさなどが、
前向きな雰囲気の文章で書かれている。

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by hiziri_1984 | 2012-10-13 23:57 | 瀆書体験  

見知らぬ旅友

弘前を歩く道中、しばらく一緒だった人がいる。

一緒と言っても、まったくの赤の他人で、
こちらが勝手に一緒だと思っているだけなのだけれども。

同い年くらいだろうか。それとも大学生くらいか。
彼はデジカメで写真を撮りながら、
道の途中にあるプチ名所を観光している。
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弘前市を歩いていると、
その昔弘前城を中心とした城下町であったその名残が、
いくつかの旧跡や地名から知ることができる。

たとえばこんなの。
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その昔、この一帯を治めた津軽一族のための生活用水が
ここから汲み取られていたのだという。
詳細は忘れた。

道のあちらこちらにこのようなポイントがあって、
自分はテキトーにぶらぶら歩いて、
たまたま行き当たったのだけれども、
彼は地図を片手にこれらを探しては見物しているようだった。

行く方向が偶然一緒なのだから仕方がない。
お互いに抜きつ抜かれつ。
なにせ弘前市内でも知られた観光地でもなんでもないコアな通りだ。
人通りはほぼゼロで、歩いているのは私と彼ばかり。
そらぁ、気にかかる。
どうやら向こうでもこちらをすこし気にしているような感じ(がする)。

こちらもあちらも男ひとり。
なんとなくシンパシーと
ちょっとだけうっとおしさを感じつつ歩いた。

自分と似た人と出会ったときの、
あの嬉しさと煩わしさというのはなんなのだろう。
相手を見ているようで、
その先に自分が見えてきてしまうからか。

しばらくするうち、いつのまにか彼を見失った。
歩いた先にあった弘南鉄道の大鰐駅。
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数年前と何ら変わらない、この古いまんまの佇まいがいい。
彼はここか、と思いつつ中を覗いたけれども、不在。
なんとなくすこーしさびしい。

歩いていると、たまにこういう道連れの人がある。
そろそろ夕方なので、帰路についた。
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by hiziri_1984 | 2012-10-06 18:21 | 西津軽探訪記(2012.8.15)  

土の匂いだこれ、弘前

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横浜から青森へ帰る。
いちばん最初に「青森に来たな」と思うのは、
土地の匂いがスーッと鼻に入ってきたとき。
それは、弘前駅のホームに降り立つ、
クルマであれば東北自動車道を降りて窓を開けた、そのとき。
急に強く嗅ぎ過ぎるとむせる。

それはどんな匂いかというと、
土の上で藁を焼いて、それが何年か経って朽ちた状態、のような匂い。
すこし湿り気がある。
(実際にそんな状態の物の匂いを嗅いだことはないのだけれども)
雨が降ると、この匂いはいつも以上に空気の中にモワッ~と立ち上がって漂う。
この土の匂いは鯵ケ沢へ行ってもずっとあって、
青森県にいる間はこの匂いがデフォルトだ。
自分にとっての“田舎の匂い”。
20歳を過ぎたくらいの頃から愛着が持てるようになった。

そして、横浜に帰ると
自宅のマンションに入った瞬間
かすかに新築のマンションの匂いがする。
コンクリートと木が混ざったような。
「帰ってきたな」という感じがする。
ただ、その匂いはすぐに消える。
いつもの家臭というか、つまり無臭の状態になる。

大学生時代、横浜から東所沢へ通っている時期があった。
その帰り道、京浜東北線で南浦和から港南台まで1時間半かけて乗って来る。
港南台駅のホームへ出ると、潮の匂いがした。これは風の強い日に限るけれども。
武蔵野から港町へ帰ってくると、こんなに強烈に海の匂いがするものかと思った。
これを人に話すと、そんな大げさなと言われることが多いけれども、
本当にそうだから仕方がない。

そういえば、田畑が多い東所沢は、青森の匂いとすこし似ていた。
それはかすかに匂うだけで、青森ほどではなかったけれども。

青森の匂いはやっぱり、土の匂いなんだろうなと
弘前を歩きながら思った。

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by hiziri_1984 | 2012-10-04 12:25 | 西津軽探訪記(2012.8.15)  

弘前と書いて“ひろさき”と読む

五能線に乗って、弘前へ。

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ただ歩いた。暑かった。

そういえば、弘前(ひろさき)の「さき」は
「前」と書いて「さき」と読むというのは変わっているな。

歩いた。目的地はない。
途中涼みたくなったが
しかし、中心街を離れると喫茶店やカフェはまったく無いので、
図書館へ駆け込んだ。図書館は涼しい。

せっかくなので、弘前出身・寺山修司の本を一冊読む。
彼の著作を読むのは、浪人生時代ぶりくらいか。

それから文学館へ行った。ここは100円で入れる。
冷房が効いていて、いい。
太宰治特集をやっていて、生原稿や創作ノートを見られた。
原稿やノートの欄外に、
自分の横顔を沢山書いていたのが印象的だ。

それ以外は、数年前と展示内容はまったく同じ。
津軽文士について復習した。

また、歩いた。
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by hiziri_1984 | 2012-10-03 23:58 | 西津軽探訪記(2012.8.15)  

五所川原で180円のチューハイと津軽漬け

晴れた日、五所川原駅で降りて、黙々と歩いた。

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かつては繁華街としてさかえ、
父曰く大きな映画館もあったそうだ。
仲間と連れ立って飲みに行くとなれば、
この五所川原であったらしい。
しかし、昔に比べると「何もなくなった」と言う。

歩きはじめて10分。
たしかに、父が話す当時の頃とは様子がちがう。

一本裏道に入ると、
スナックやナイトクラブ、一杯飲み屋が立ち並ぶ
湿っぽい通りに出る。

一軒、昼間から開いている店があったので、
ちょっと飲んで大将に話をすこし聴いた。

イトーヨーカードーの登場によって、
地元百貨店や商店街はすっかりなくなってしまったらしい。
そういえば、鯵ケ沢もくそイオンのおかげで、
駅前のにぎわいは消えた。

ちなみに、青森県内で初のスターバックスが出来たのは、
ここ五所川原であるとのことで、
そこんところは笑って誇らしげに語っていた。
「今度、立佞武多を見にくればいい」
そうする。また、次は夜に来てみたいところだ。

五所川原は、いまでも交通の要所である。
JR五能線と津軽鉄道が乗り入れ、
青森と関東を結ぶ長距離バスの発着場でもあり、
自分も何度か利用した。

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あっちが津軽鉄道のホーム。
津軽鉄道に乗ると、太宰治の出生地として有名な金木に行ける。
冬は吉幾造の歌でお馴染みの「ストーブ列車」となる。

自分は五能線に乗って、次は弘前に向かう。
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歩いたのはこのあたり。

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by hiziri_1984 | 2012-10-02 13:25 | 西津軽探訪記(2012.8.15)  

ツッコミ道中

町をぶらぶら歩いていると、色々なものに出くわす。

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おい、著作権!著作権!!
「三平」のフォントまで一緒だ。
でも実は、本当に矢口高雄ゆかりの何かがあるお店ではないかと思ったりして。
(矢口高雄は傑作『釣りキチ三平』の作者)
あと、「フイッシング」じゃなくて「フィッシング」ね。

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植物の精力剤といったところか。なにせ「超」だ。
さぞ、ビンビンに育つんでしょうな。
(わざわざ「氣」にしているのは、稲にも使えるということか)

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ご忠告ありがとう。
でも、
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そんなに長い物を持つことはきっとないから大丈夫そうだよ。


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“そうそう、フンは拾って持ち帰り・・・って、ヘビがいんのかよっ!”
拾う手をサッと引っ込める。
あっぶねー、あやうく手首を噛まれるところだった。
さては、罠か。
・・・速やかに拾えということだな。
(そもそも犬を連れてはいないけれども)

売り言葉に買い言葉。
青森に来たら、青森にあるものでたのしむ。
ツッコミ道中@鯵ケ沢でやんした。
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by hiziri_1984 | 2012-10-01 13:45 | 西津軽探訪記(2012.8.15)