淡々と、工場で働いてみる

最近、日雇いで、工場や倉庫で働いている。

退職してから半年が経ち、
そろそろ懐がさみしくなりにけり、といったところだ。

作業の内容は、
工場での組み立て作業、倉庫で荷物の検品・仕分け、
引越しの手伝い、イベント会場の設営、冷凍庫での荷物の運搬などなど。

日時と給与、勤務地を見ながら、
主に横浜、川崎でいろいろな作業をする。

時給が高い仕事はその分、深夜作業や肉体を酷使するので疲労度も高い。
疲れでその日一日がそれっきりになってしまうので、避けている。

大学時代、引越しのバイトをやったとき、
引越し先のマンションのエレベーターが故障したため、
急遽階段リレーをやるハメになり、
あまりのキツさに吐いてしまったという苦い体験もある。
上と下をプロの人に挟まれ、荷物を抱えて、
とんでもないスピードで階段を上り下りした。
あれはキツかった。

というわけで、ガテン系感が極端に強い仕事は避けながら、
日雇いをやっている。

そんな折、たまたま読んだ同人誌に
町工場で働く女性のルポがあって、おもしろかった。

本業はライターである女性が、それだけでは食っていけないので
さまざまな町工場で働き(なんとなく自分と似ている)、
その体験を基にして書かれた、「町工場再発見」的内容のルポだ。

その中に、工場で働くおもしろさを魅力的に書いている一節があった。

 町工場の人々はとても合理的だ。
 人間関係の無駄な部分は、ほぼすべて省く。
 たとえば嫉妬とか愚痴とか陰口とか足のひっぱり合いとか、
 そんなものにはまるで興味がない。
 納期という絶対目標を守る仲間として、
 そこにいる全ての人々を赦し、受け入れ、歓迎する。
 たった1つの目標が、そこにいる異なる境遇の人々を、
 美しい円に繋げている。
 純度の高い「労働」が、町工場には存在しているのだ。

やや美化し過ぎな感がないではないが、たしかにそうだなと思った。
ちょうど工場勤務の休憩中にこれを読んだからか、
余計に共感度も高かった。

会社勤めの経験もあるらしい彼女。
その頃、人間関係のしがらみに巻き込まれでもしたのだろうか。
相当イヤなことがあったのかと思ってしまうほど、
会社への恨みがこもったような一節もあって、笑った。
自分も5年間会社で仕事をしていたから、
そのへんはなんとなく分かる。
ただ、会社には会社ならではの一致団結があるけれども。

工場というと、
鎌田慧の『自動車絶望工場』や
シモーヌ・ヴェイヌ『工場日記』などにあるような
精神的にも肉体的にもキツイ、
悲惨な環境下で黙々と労働するイメージがあったけれども、
実際はかなりちがった。少なくとも自分の知っている範囲では。
案外働きやすい。

「誰でもできる」単純作業であることに変わりはないし、
やりがいがあるかと言われるとYESとは言い難い。
しかしながら、それゆえの働きやすさはあるし、
職場の雰囲気は決してわるくない。
勤務時間休憩時間も厳守だ。

自分にとって、日雇い最大の魅力は、
給与が勤務翌日や翌週に振り込まれることだ。
きょう働いた分、あす報酬が入る。
会社勤めを経て、あらためてこれを体験すると、すごく新鮮に感じる。
妙にうれしいのだ。
「稼ぐ」という実感がある。
(そんなにお金に困っているということではないけれども)

“純度の高い「労働」が、町工場には存在している”
まさにこの感じ。

現場の社員やスタッフの人ともそこまで深く関わることもない。
休憩時間や作業中にすこし言葉を交わすくらい。
気を使いすぎることもない。
それがちょうどよく、居心地はいい。

というわけで、まぁもうすこし日雇いをやろうと思っている。

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引用したルポが載っている、文学フリマで購入した『季刊レポ vol.7』。発行人は北尾トロ氏。
他の同人誌に比べてテーマが普遍的で読みやすく、
いい加減のマニアックさで、おもしろい。


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これが一部引用させて頂いた、
「わたし、何でもできるの? 素晴らしき町工場」というタイトルの中島とう子氏のルポ。
職人の技やパート女性のたくましさなどが、
前向きな雰囲気の文章で書かれている。

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by hiziri_1984 | 2012-10-13 23:57 | 瀆書体験  

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