片付けのフーガ

部屋の片付けがいっこうにはかどらないのは、
ひとえに所有物が多いからであり、
また、テキパキやっていけばいいものを、
「あ!これはあの時の」とか「懐かしいわ~」などと
ひとつひとつを手に取り、仔細に眺めながら、
うっとりしているからである。

そのうちのひとつが、浪人時代の勉強道具である。
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10年ほど前、現役受験に落ちた自分は、
18から19歳の間、代々木ゼミナールに通っていた。
思えば、目的をもって勉強したのは、あれが最初で最後である。
文系の自分は、英・国・日本史を学んでいたのだけれども、
自分がぜひとも入学したいと思っていた大学には
小論文の試験があり、またその出題傾向の独自さゆえに、
その大学専門の小論文講座があった。

その授業のことは、いまでもよく覚えている。

その講座のために週1で横浜から代々木へ通って、
とにかく毎週小論文を書いていた。

担当講師は高橋敏夫というジョン・レノン似の人で、
これは大学入学後に知ったのだけれども、
この高橋氏は気鋭の文芸評論家で、また、
当時はどうだったかわからないけれども、
現在は早稲田大学の教授である。
しかも、学生たちから
「早稲田で一番面白い授業」に選出されるほどの人気教授である。

そんな人の授業を代ゼミで受けていたのだから、
幸運といえば幸運だ。
(早稲田の一文、落ちたし)

講座の内容は、単に試験の傾向と対策というのではなく、
合格目標が芸術学部であったこともあり、
全体のテーマもすこし変わっていて、
大まかにいうと、常識・世界に対する個の発揮といったもので、
発想と発見に重きを置く、とてもラディカルなものであった。
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高橋氏は、穏やかなジェントルマンであったが、
その落ち着いた佇まいの中にも、
時たま見せる、常識・先入観へのアンチテーゼっぷりが
非常に刺激的であり、また、ワクワクした。
生徒というより、文学・芸術を志す者として相対する感じで、
他の講座とはまったく雰囲気が違った。

おかげで、学んだ甲斐もあり、
試験では努力した分を発揮でき、目標を達することができた。
著作『ゴジラが来る夜に』『この小説の輝き』は、
大学時代に読み、いまも自分の書棚に並んでいる。

という風に、
ひとつひとつのモノとその記憶を振り返ったりしているから
いっこうに片付けが進まぬのであり、
ほら、本日もまもなく日が暮れる。

とりあえず、他のテキストは捨てることにして、
この講座で使った原稿などは一応とっておこうつって、保留にして、
引き続き、手を動かす。
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by hiziri_1984 | 2012-05-10 19:46  

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